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開成への国語  阿部夏丸 ━見えない敵━ 2

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阿部夏丸━見えない敵━

本

「ところでさ、これ、どうしたの?」

 「それかい、僕が採った虫だよ。そうそう、この前話しただろう。キャンプで採ったミヤマクワガタ」

 「そうじゃなくて、自分で・・・・・・」

 「ああ、自分で作ったんだよ」

 「へーっ」

 「だって、僕は、標本なんか作ったことないからさぁ」

 「かんたん、かんたん。たいしてむずかしいものじゃないよ。乾燥させたり、腐らないための注射をしたりするけどさ。大事なことは、ていねいに扱うってことだけ。脚が折れたり、触覚が折れたりしたら、台なしだからね」

 「注射を打つの?」

 「打つよ」

 「じゃ、注射器なんかも持っているんだ」

 「ああ、見るかい」

 カツミはそう答えると、作業台に引き出しを両手で引いた。

 「うわぁ」

 引き出しの中には、いろいろな道具でいっぱいだった。

 注射器、虫ピン、毒瓶に三角紙と昆虫標本を作るための道具。さらに、メス、ハサミ、ピンセット、シャレーにスポイト、顕微鏡などが、実に整頓されて並べてあった。

 「すごいや、まるで本物の理科室だよ」

 ケンジは、引き出しをのぞき込みながら、そういった。

 「なんだかさぁ・・・・・・」

 「なに?」

 「さっきから、理科室みたい、理科室みたいって」

 「ごめん、ごめん。でも、仕方ないよ。こんな引き出し、どこの家にもないからね」

 「そうかなぁ」

 カツミは、ケンジの手から標本箱を受け取ると、もとにあった棚にそっと返した。そのときだ。ケンジは、棚の横にもう一つの、小さな標本箱を見つけた。

 「あっ、これ」

e:団塊の世代の懐古現象?いや、サイコ現象かな?

F:団塊の世代の子供たちが結婚し、子供が生まれ

e:孫にあたるわけですね。

F:その孫に゛伝わっていく゛

e:団塊の想いが?!

F:竹トンボに草ぶえ

e:フラフープにダッコちゃん?

F:蝶や蜻蛉が飛び交い

e:蝉が鳴き交わす夏の川辺の風景

F:そこに炎天

e:そして雷

F:夕立

e:トトロの世界

F:宮崎駿のポニョ

e:古~い!

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阿部夏丸━見えない敵━

本

自分に自信がないケンジ、ガキ大将のアキラ、都会からの転校生カツミ。
3人の少年が直面した、ある夏の物語。少年たちの中に潜む暴力性や仲間はずれへの恐怖......その中で自分らしく生きることの意味をつかむまでを描く。少年文学の名手・阿部夏丸の長編小説。

 それは、手のひらに乗るほどの標本箱だった。赤く化粧のされた紙箱は、おそらくお菓子の箱であろう。その箱には脱脂綿が敷かれ、真ん中に大きめの水晶が固定してあった。そして、その横には米粒のような水晶を入れたプラシチックケースが添えてある。

 「この前の、水晶だね」

 「うん」

 「すごいや、僕なんか、まだビニール袋に入れたままだ」

 「こうするだけで、カッコいいだろう」

 「僕にもできるかなぁ・・・・・・」

 「できるさ」

 ケンジは、感心しながら標本箱を眺めた。

 「おやっ?」

 標本箱の側面に小さな紙が貼ってある。ケンジは、そこに欠かれた小さな文字を、目を細めて読みとった。

 ≪水晶、採取日、6月24日、場所、村積山、ケンジくんと≫

 (ケンジくんと・・・・・・)

 なんだか、嬉しくなった。自分も標本箱を作ったら、きっと「カツミくんと」と書こうと思った。と、そのときだ。玄関のチャイムが音を立てた。

問 「なんだか、嬉しくなった」とありますが、それはなぜですか。

 ピンポーン、

 「あっ、来たな」

 「さ、ケンジくんも行こう」

 「誰、知ってる人?」

 「うん、よく知っているはずだよ」

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本

 カツミについて廊下を歩いていくと、玄関に立っていたのは、驚いたことに、世良ミユキだった。三日前に転校して来たばかりのミユキが、どうしてここにいるのだとケンジは自分の目を疑った。

 「よく来たね」

 とカツミがいうと、ミユキは、ペコリと頭を下げた。

 

 「さあ、あがりなよ」

 「おじゃましまーす」

 ミユキは、靴をていねいに揃えると、カツミについてリビングに入った。それから、ソファーに膝を揃えて座った。

 「コーラでいいかい」

 「私、炭酸だめだから」

 じゃ、オレンジジュースだ

 カツミは、ケンジが来たときと同じように冷蔵庫からジュースを取り出すと、ミユキの前にカチャリと置いた。ケンジは、そんな二人の姿を、ポカンと口を開けたまま眺めていた。

 「どうしたんだい、ケンジくん」

 「えっ?」

 「座ったら」

 「う、うん」

 ケンジが、あわててソファーに腰掛けると、ミユキはうつむき加減に笑った。

 「ミユキさんは知っているよね。ケンジくんのこと」

 「うん、だって、同じクラスだから。カツミくんは、ケンジくんと仲がいいの?」

 「まあね。一番仲のいい友だちさ。なっ」

 「う、うん」

 ケンジは小さくうなずいた。しかし、心の中は複雑だった。

問 「心の中は複雑だった」とありますが、それはなぜですか。

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[募 集]・・・若干名 [入会金] ・・・10000円 
[期 間]・・・2016年1月末日
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 ここでは、読解問題を一律にする指導から脱却し、国語学習の理想環境を設定して、あらゆる教科の基礎である”語彙力”や”思考力”そのものの向上を目指すとともに慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部受験に必要な「国語基礎力」を養成します。
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「読解と記述指導」と「文章をまとめる力」の徹底指導を行い、あらゆることの基礎である言葉で考える力と語彙力を根本的に養成し、本物の「慶應国語」を目指します。

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②ご面談(御父母とお子様)
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阿部夏丸━見えない敵━

本

ケンジ、アキラ、カツミ。
3人の少年が直面した、ある夏の物語。
子どもの中に潜む暴力性と、
仲間はずれへの恐怖を乗り越えて、
いかに自分らしく生きていくかを
描いた長編小説。

(確かに僕とカツミくんは友だちだ。だが、アキラたちさえ知らないその事実を、転校してきたばかりのミユキに話すなんて・・・・・・)

 ケンジは、そんな思いでコーラの瓶に手を伸ばした。

 グビッ、

 緊張感の抜けた甘ったるい味だった。瓶のまわりにだらしなくついた水滴で右手がベットリと濡れた。ケンジは、その手をズボンの膝で拭うと、思い切ってカツミにいった。

 「カツミくん」

 「なんだい?」

 「ミユキさんとは、仲がいいの?」

 「いいや、学校であいさつをする程度だよ」

 カツミは、あっさりと答えた。

 「そうか・・・・・・」

 ケンジがうつむき加減で答えると、ミユキがいった。

 「いやだぁ、そんな複雑な顔をしないでよ。私、転校してきた日にカツミくんに助けてもらったでしょ。だから・・・・・・当たり前でしょ」

 やけにはっきりとした口調だった。考えてみれば、あの事件でミユキは、ケンジ以上に感激したはずなのだ。ケンジは、納得した顔でうなずいた。

 「その話は、よそうよ」

 と、カツミがいった。

 「どうして?お母さんは、よくお礼をいいなさいっていったわ。とっても勇気のある子だって褒めたわ 」

 カツミは、困ったなぁという顔をした。

 ケンジは複雑な心境だった。転校して来たばかりのミユキにとって、カツミの行動がたまらなく嬉しかったのはよくわかる。ケンジだって、カツミの勇気ある行動に心を打たれた。しかし、それを口に出されては、自分の立場が無かった。

 (僕もあのときあの教室に、カツミくんと同じようにいたのだ。なにもできずに立っていたのだ)

 そう思えば思うほど、だんだん自分が惨めになってきた。

 「ところでさ、ヨシコさんは?」

 カツミが、はぐらかすようにいった。

 「そうそう、ヨシコさんは家の用事で来れないって。私もね、一人で来るのは恥ずかしかったけど、家も近いし、ケンジくんが来るって聞いてたから」

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阿部夏丸━見えない敵━

本

(えっ、ミユキばかりでなくヨシコも誘っていたの?その上、僕が来ることも、二人に話していたの?)

 ケンジはそんな気持ちで、カツミの顔を見つめた。

 しかし、カツミは、まったく悪気などないという顔で、あっさりといった。

 「ふーん、そうか、それは残念だね」

 「ヨシコさんも残念がっていたわ」

 「ところでさ、ミユキさんは、名古屋のどこに住んでいたの」

 「私は、名東区。牧の里よ」

 「じゃ、牧野ケ池の近くだろ」

 「知っているの?」

 「僕は、昭和区だったからね。東山公園によく入ったけど、遠征して牧野ケ池緑地へも出かけたよ」

 「じゃ、ずいぶん近くじゃないの。どこかで、すれちがっていたかもしれないわね」

 ミユキは、はしゃぐようにしてそういった。カツミが、自分が住んでいた場所を知っている。それは、転校してきたばかりのミユキにとって、たまらなく嬉しいことだったようだ。

 しかし、それとは反対に、ケンジの表情はさえなかった。ケンジは、名古屋へなど行ったこともない。名東区も知らなければ昭和区も知らない。東山公園も牧野ケ池も、なにもなにも知らない。二人の話が盛り上がれば盛り上がるほど、ケンジは、自分の心が冷たく冷たく冷えていくのを感じた。

 「あーん、名古屋に帰りたーい」

 「はははっ。来たばかりだからそう思うんだよ。ここだって、いいところさ」

 目の前で笑っている二人の声が、遠いところから聞こえた。一番仲の良い友だちだといってくれたカツミの言葉が、果てしなく遠く感じた。ケンジは、残ったコーラを一気に飲み干すと、黙って立ち上がった。

問 「残ったコーラを一気に飲み干すと、黙って立ち上がった」とありますが、それはなぜですか。

 「どうしたんだい。ケンジくん」

 「僕、そろそろ帰るよ」

 「えっ、もう?」

 「うん、用事があることを忘れてた」

 「用事って・・・・・・」

 「用事は用事さ。早く帰らないと、叱られちゃうから。じゃあ」

 ケンジはそういい残すと、急いで部屋を飛び出した。玄関まで追いかけてきたカツミがいった。

 「ケンジくん。怒ったのかい」

 運動靴を履きながら、ケンジはいった。

 「怒るって、なにを」

 「そりゃあ・・・・・・ミユキさんを呼んだこと」

 本音を見抜かれて、ケンジは動揺した。

 「なんでそんなことで僕が怒るのさ。用事だっていってるだろ!」

 (しまった・・・・・・)

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開成への国語  彼はいったい、何者なのだろう  薄井ゆうじ ━青の時間━  プロローグ

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                      ≪これまでのあらすじ≫

 ある日、風変わりな少年が「僕」(岩崎満)のクラスに転校してきた。名前は「青木万里夫」という。しかし、クラスに馴染めない「万里夫」は孤立したまま、夏休みを迎えることに。八月のある早朝、”カブト虫”を捕まえるために、「僕」は妹(奈奈)と近くの森に出かけ、そこで偶然「僕ら」は、手品の練習をする「万里夫」と遭遇。クラスでの様子とは異なり、そこでの「万里夫」は「僕ら」と積極的に話しかけるのだった。話の中での”カブト虫”にどういうわけか「万里夫」は異常なほどの興味を示し、捕まえた”カブト虫”をぜひわけてくれるように「僕ら」に頼み、立ち去る。

 夜が明けて、陽が高くなった。

 小屋の近くまで来てみたが、水車は回っていなかった。これが壊れたのは僕が幼稚園のころだろうか。あれからもう、ずいぶん経つ。いや、水車は壊れたのではなく、巨大な水車を回すのに十分な水量が小川から失われて久しいのだった。

 僕は水車小屋の前に立って、しばらく迷っていた。

 妹は先に帰らせた。一緒に連れて来ようかとも思ったのだが、妹は水車小屋に近寄ることを怖れた。それより、早く籠いっぱいのカブト虫を家に持ち帰って遊びたいのだった。カブト虫は驚くほどたくさん木に群がっていた。何日か前に蜂蜜を塗っておいたのがよかったのかもしれないが、一度にあんなにたくさんのカブト虫を見るのは、はじめてだった。あの小さな森の、どこから涌いてきたのだろう。クワガタも何匹か混じっていた。僕はそれらをすべて捕ることはせずに何匹かを選んで籠のなかに入れると、惜しそうに振り返る妹をうながして森を出た。

 水車小屋と家への分岐点まで戻ってきたとき、僕は籠のなかから雄雌一匹ずつカブト虫を取り出し、来るか?と妹に言った。意味がわかったのだろう、僕が持っている二匹を残念そうに睨みつけると、妹は首を横に振った。家のそばまで妹を送って水車小屋の前に引き返して来たところには、もうすっかり夜が明けていた。そして僕は、迷っているのだった。

 ━━彼はいったい、何者なのだろう。

 それがわからなかった。わかっていることなんて何もない。敵なのか味方なのか、どこから来たのか、なぜ木製のピンを放り上げていたのか。

 わかっているのは彼の名前と、友達をつくりたがらないということ、そして水車小屋に住んでいるらしいということだけだ。ここに誰と住んでいるのか、それさえもわからない。

 だがもうひとつ、僕にはわかっていることがあった。彼はカブト虫を欲しがっている。そして僕はいま手のなかに二匹のカブト虫を持っている。そのことだけが頼りだった。勇気を奮い起こして深く息を吸い込むと僕は小屋のドアをノックした。粗末な板切れを乱雑に釘で打ちつけてあって、どこがドアなのかわからないような外壁だった。もういちどノックしたとき、僕が叩いた箇所とはぜんぜん別の外壁の一部がひらいた。そこが出入口らしい。

 薄くひらいた戸の隙間から、色白の肌と細い目が覗いた。その視線が僕をとらえると戸は大きくひらいて、そこに万里夫が立っていた。

                               *

 その日をきっかけにして、僕はたびたび水車小屋へ行くようになった。夏はうんざりするほど長かったし、彼との距離をゆっくりとせばめるには充分すぎる時間が転がっていた。

 僕は水車小屋のドーナッツ型の椅子にすわって彼の手のなかから、さまざまな品物が出現するのを見た。トランプ、サイコロ、本、帽子やステッキ。そういうものが薄暗い小屋のなかで、彼のてのひらから次々に出現した。彼の指のあいだではコインが自由に踊り、カードが扇になり、波打ち、そして花びらのように散った。

 たった一人の観客のために万里夫はいつまでも飽きずに無数の手品を演じた。明るくてテンポの速い、そしてよく計算されたマジックショーだった。いままでにテレビで観たどのマジシャンの演出よりも、垢抜けていて、新鮮でリズム感のある小さな驚きが僕の目の前で次々に繰り広げられていく。そういうものを見るのは、とても楽しかった。

 「全部、ひとりで考えたんだ」

 「手品師になるのか?」

 「わからない。こうしていると気分がいいだけだよ」

 彼は曲芸やアクロバット的なことも熱心に訓練しているようだった。早くサーカスに出てみたい、とも言った。そのことが彼にとって、父や母と一緒に暮らせる唯一の手段なのだと気がついたのは、ずいぶんあとになってからだった。

 僕は何度か、妹の奈奈も小屋に連れて行って彼の手品を見せた。奈奈ははじめのうちは怖がっていたが、しまいには連れて行ってくれとせがむようになった。彼は奈奈を連れていったときに限って、いつも新しい手品を披露した。だから妹は同じ手品を二度と見ることはない。それは万里夫が意識してそうしているのか、あるいは偶然そうなったのかわからない。いずれにしても奈奈と万里夫は親しげに会話するまでになっていた。

問 「僕は水車小屋の前に立って、しばらく迷っていた」、「そして僕は、迷っているのだった」とありますが、何について「僕」は迷っていたのですか。

問 「妹」が「首を横に振った」のはなぜですか。

問 「敵なのか味方なのか」とありますが、これはどういうことですか。

e:水車小屋と言えば・・・

F:黒澤明 『夢』の撮影に使われた

e:大王わさび園の「水車小屋」ですな。

ー水車のある村ー

旅先で、静かな川が流れる水車の村に着く。壊れた水車を直している老人に出会い、この村人たちが近代技術を拒み自然を大切にしていると説かれ、興味を惹かれる。老人の初恋の人であった老婆の葬式が行われた。村人は嘆き悲しむ代わりに、良い人生を最後まで送ったことを喜び祝い行進するのであった。ー夢 (映画) - Wikipediaーより引用

F:水車小屋と言えば・・・

 『橋野川の川原をどこまでもさかのぼると、三十分ほどで、右側に水車小屋が見えてくる。その水車小屋と並んだ萱ぶきの一軒家が、おれの家なんだ』ー井上ひさし ━━川上の家━━よりー

e:例の”河童伝説”?で、「万里夫」が河童?

F:まさか???「水車小屋」という舞台装置は

e:なにか”神秘的”なイメージが・・・

F:しますか?

e:”悲劇性”?

F:しますか?

シューベルト作曲・ヴィルヘルム・ミューラー作詞『美しき水車小屋の娘』

さすらいの旅に出た若き粉引き職人が、旅先で美しい水車屋の娘と出会い恋におちる。しかし男性の想いは娘には伝ず、若者は娘の姿に心を奪われながら悩み続ける。そのうちに娘は狩人に心を奪われる。粉引き職人は心痛のあまり小川に身を投げる。 ー水車小屋 - Wikipedia ーより引用

e:関係ない、みたいですな・・・

F:さて、「僕」が迷い悩んでいたのは?

e:「勇気を奮い起こして深く息を吸い込むと僕は小屋のドアをノックした」とありますから

F:「小屋のドアをノックするかしないか」

e:単純に考えて

F:その点ですね。

e:じゃあ、なぜノックするかどうかについて悩む?

F:正体不明の「万里夫」ですから

e:どんな所に住んでいるのか?不気味?

F:あるいはこれから「僕」はいったい何をしようとしているのか?

e:意思がまだはっきりと固まっていない?

F:「万里夫」に対しては興味津々で

e:関心はあるが

F:必ずしも仲がいいとは言えない

e:どちらかといえば”疎遠”?

F:どいうふうに判断して行動していいのか

e:具体的な判断ね

F:「僕」は判断に迷っている、

e:具体的な行動とは

F:例の二匹の”カブト虫”を手渡すかどうかということですね。

e:次に、妹の奈奈が「を横に振った」のは?

F:単純に「『僕』の誘いを断ろうとしたから」

e:正体不明の「万里夫」のいる水車小屋の行くかどうかという、ね

F:だけでは、

e:説明不十分ってとこかな?

F:それでは、”説明”したことにはならない

e:ですか?では、前に「捕まえたつがいのカブト虫を手渡すため」と書けば・・・

F:×に近い

e:△?

F:「妹は水車小屋に近寄ることを怖れた」

e:「それより、早く籠いっぱいのカブト虫を家に持ち帰って遊びたい」

F:とありますから、

e:しっかりこのあたりの”根拠”?

F:書くべきでしょうね。

e:この”怖さ”と”遊びたさ”で

F:「僕」の誘いを断ろうとしたから

e:○に近い

F:△?

筆名:薄井ゆうじ
本名:薄井雄二 (ネット名:くじら鳥)
生年月日:昭和24年(1949年)1月1日
出身地:茨城県(県立土浦第一高等学校卒高校卒業後、日雇い生活。
その後、イラストレイター「たの・かえる」として週刊プレイボーイ誌に五年、夕刊フジ紙に十六年間イラストを掲載。イラストルポやグラフ誌写真取材等を手掛け、広告及び編集プロダクション「株式会社イーハトーブ」を経営。現在は専業作家として文芸各誌に小説を多数連載

薄井ゆうじ━青の時間━

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メモ

開成への国語  友達なんていらない 薄井ゆうじ ━青の時間━ 1

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 気が遠くなるほど長いはずの夏休みは、あっという間に過ぎ去った。新しい学期がはじまると僕は水車小屋へはほとんど行くことがなくなった。またほかの友達と遊ぶようになって、万里夫からすこしずつ遠ざかっていった。万里夫は僕以外の少年とは相変わらず口をきこうともしない。彼とだけ付き合っていれば、僕はほかの友人を失うことのなる。万里夫を仲間の輪に入れようと何度か努力してみたが、それはうまくいかなかった。そんなふうにして彼はまた、もとのように孤立していった。

 「友達なんていらない」と彼は言った。

 「どうして」

 「ミツルは別だ」

 彼はその理由を言わなかった。たぶんカブト虫と何か関係があるのだろうと思ったが、僕はそれ以上、何も訊かなかった。

 そうして、彼との距離は平行を保ったまま秋が来た。僕は久しぶりに水車小屋を訪れた。彼が来ないかと誘ったのだった。また新しい手品を見せたいのだろう。そう思って行ってみると彼は小屋の外の、水車近くにすわっていた。大きな水車はひからびたまま、ちろちろと流れる小川の水を恨めしそうに見下ろしている。彼はその土手にすわって、流れを見つめていた。

 「回そうかと思うんだ」背丈の倍以上もある大きな水車を見上げて彼は言った。

 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」

 「どうやって?」僕は巨大な水車とわずかな水に流れを交互に見ながら言った。

 「クブト虫の摑みかたと同じだ、僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」

 手で回す。それがいちばん手っ取り早いだろう。だが彼は、違う、と言った。

 「方法は二つある。ひとつは川の水量を増やすこと。巨大なポンプでどこかから大量の水を引いて来るんだ。でもそれは、手間もかかるし僕たちにはできない。もっと簡単な方法がある。流れを堰き止めるんだ。」

 「堰き止めたら、よけいに回らなくなるじゃないか」

 こうするんだ、手伝え、と彼は言って立ち上がった。どこかから太い棒を二本持ってくると小川の上流の川幅いっぴに立てた。その支柱を支えにして板を何枚か組み合わせると、大きな壁ができた。川の水はそれに堰き止められて、すこしずつ貯まっていく。彼が何を考えているのか、ようやくわかってきた。

 「ずっと考えていたんだ、水車を回す方法を。流れる水を増やそうなんて考えてはいけない。堰き止めるんだ」小川の水はじりじりと水位を上げていく。「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする。」

問 「友達なんていらない」とありますが、なぜですか。

問 「彼との距離は平行を保ったまま」とありますが、どういうことですか。

問 「彼が来ないかと誘ったのだった」とありますが、「万里夫」が「僕」を水車小屋に誘った目的を答えなさい。

問 「本当にこれを回してみようと思ってるんだ」とありますが、では「万里夫」はどうやって回したのですか。

問 「そのうち流れを止めることも覚えなければ」とありますが、どういうことですか。

e:またまた出ました!?『薄井ゆうじ』の世界・・・

F:薄井ゆうじと言えば、最近、麻布中で出題されましたね。

麻布2010年「木登り牛」(『十二支の童話』所収、薄井ゆうじ)

e:確か、「飼育する少年」(『十四歳漂流』所収)開成中で平成14年に出題されました.よね。

F:ということで・・・駒場東邦中学

e:出てもおかしくないけど・・・

F:出ない確率の方が高いかも・・・

e:と、言ってもどこかの学校で出る可能性は高い?

F:開成、麻布の問題は

e:注目校や

F:躍進校なんかは研究していますからね・・・

e:出る確率が高い?

F:過去に”例”が

e:いくらでもある?

素顔が隠されたマジシャン“ブルー”。
僕は彼のなかに幼なじみの姿を見た。
が、彼の幹部スタッフのなかにも、
なぜか“ブルー”の影がちらつく。
そして悲しい真実が明らかになるとき、彼は姿を消した。
“ブルー”はいったい誰なのか、そしてどこへ行ったのか。 長編
文藝春秋
1995年12月15日刊行
定 価 1600円
ISBN4-16-640060-6
判型B6/293ページ

筆名:薄井ゆうじ
本名:薄井雄二 (ネット名:くじら鳥)
生年月日:昭和24年(1949年)1月1日
出身地:茨城県(県立土浦第一高等学校卒高校卒業後、日雇い生活。
その後、イラストレイター「たの・かえる」として週刊プレイボーイ誌に五年、夕刊フジ紙に十六年間イラストを掲載。イラストルポやグラフ誌写真取材等を手掛け、広告及び編集プロダクション「株式会社イーハトーブ」を経営。現在は専業作家として文芸各誌に小説を多数連載

薄井ゆうじ━青の時間━

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すべては『三教科合格』のためにー過去問国語『満点』を目指す

開成への国語 薄井ゆうじ ━青の時間━ 2

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F:さて、

問 「友達なんていらない」とありますが、なぜですか。

e:上位校はこのような問題をよく出しますね・・・

F:前後文で解決できない

e:両目の範囲で解けない

F:原則

e:”パス”問題かな?

F:相当、後の方まで読んでいかないと・・・

e:帰納法で?

F:”別れの場面”

e::”別れの場面”って結構、ポイントになtりますね・・・

F:物語を”凝縮”するような記述が時々、見受けられますから。

e:「刑事コロンボ」の帰り際に、「あ~・・・、それから

F:もうひとつ、訊きたいことが・・・」

e:意外と、これが事件の真相の

F:”鍵”になっていたりして・・・

e:物語文も得てして・・・

F:ドラマも物語ですから。

e:で、

 「クラスのみんなに挨拶していかないのか」

 「先生もそう言っていた。でも今日の列車の切符を速達で送ってきたから、もう時間がない。それに・・・・・・」そこで彼は言いよどんだ。

 「いつか、友達なんていらないって言っただろう」

 「冷たいんだな」

 「あんなの嘘だ。今日みたいな日が辛くないように、そうしているだけだ」

 そのことはわかっていた。そう気がついたのはつい最近だが、僕にはなにもかもわかっていたような気がする。

 「・・・・・・残念だな」と僕は言った。

 「一人だけ友達ができた。それで充分だ」真っ白な息と一緒に言葉を吐き出した。

F:この「いつか、友達なんていらないって言っただろう」

e:という万里夫の”セリフ”に

F:気がつけば、その直後に

e:万里夫自身が本音を吐露してますな。

F:両親からの手紙によって

e:万里夫自身の意思とは無関係のまま

F:突然の”別れ”を伴う不意な、”転校”

e:不本意な、”転校”を重ねるような?

F:”思いがけない転校”の生活を過ごしていると推測できますね。

e:このような境遇が「友達なんていらない」

F:と言わせた背景にあるんじゃないでしょうか。

問 「彼との距離は平行を保ったまま」とありますが、どういうことですか。

e:「距離は平行」とは?

F:「万里夫」と「僕」との”思い”

e:の”ギャップ”?

F:意思疎通の

e:”ズレ”?

F:「万里夫」の”境遇”に

e:思いを馳せれば・・・「僕」の態度にはちょっと”冷たい”

F:”思いやり”が足りない?

e:「万里夫」の方は”発言”とは裏腹に

F:”友達”志向?

e:「僕」の方こそ「友達なんていらない」的態度

F:冷淡で、

e:素っ気無い?

F:無関心?

e:「僕」の方は”バランス”志向かな?

F:「ひとと歩調を合わせる」という記述が最後のほうにあります。

e:”平行バランス”?”対立バランス”ではなく・・・

F:「僕」の方は付き合いの”バランス”を考えていることは

e:確かですな。結果的に「万里夫」が孤立してしまう状況を作っても

F:それを気にするような素振りもありませんね。

 万里夫は僕以外の少年とは相変わらず口をきこうともしない。彼とだけ付き合っていれば、僕はほかの友人を失うことのなる。万里夫を仲間の輪に入れようと何度か努力してみたが、それはうまくいかなかった。そんなふうにして彼はまた、もとのように孤立していった。

e:「特別な存在」としての”+”の想いと

F:「普通の友達」としての”ー”の思いの

e:悲しいかな?

F:”すれ違い”って、とこですかね・・・

e:で、この設問のポイントは?

F:この後の展開をふまえた場合でも、

e:「万里夫」は「僕」

F:「僕」ってのは

e:「満」

F:「ミツル」に対して

e:常に好意的な接触を

F:働きかけをおこなっていますね。

e:直前でも、

F:「万里夫」は「友達なんていらない」

e:と言いつつ「ミツルは別だ」

F:と言っており、「僕」への好意的な態度

e:が印象に残りますな。

F:一方、「僕」の方はと言えば

e:これまた、そっけない

F:冷淡ともいえるような無関心さ

e:他の友達との手前、仕方ない?

F:”転校生活”の経験がないので・・・

e:例の”別の友達との付き合いのバランス”?

F:を考え、結果的に「万里夫」が

e:”孤立”してしますようになっても、

F:それを気に病むような様子がないですね。

e:アメリカ・シリアの”話し合いは平行線”!?

F:???

e:「万里夫」と「僕」の

F:”付き合いは平行線

e:「万里夫」は「僕」との間に

F:”一定の距離”を感じたまま

e:”おさらば”って感じかな・・・

F:親密度を高めることも・・・

 「それに、ぼく、もうすぐ転校するし」

 わたしはゆっくりと首を回して彼を見た。

 「どこに?」

 「東京」

 「そうか」

 わたしはなんとなく道の端にしゃがみ込んだ。目の前を川が流れている。水量は少なく、乾いた土手には手を切りそうな薄の葉が揺れている。そんなものを眺めながらしばらく黙っていた。

あの日のあなたがここにいる  松村栄子  ━001にやさしいゆりかご━

大がかりな手品のトリックのあたり、面白かったです。
読み応えアリ。

人は他人の中に、自分の求めている人格を見つけ出す、という話なのかな。
だから、誰もがその人であって、その人でないという…。
誰かの影を追い求めているということか。
自分の求めているものの本質がわかると、すとんと納得できるのでしょうが、この本を読むと、それは自分の悲しい記憶につながっているのではないかと、不安になります。ー本の日記:「青の時間」薄井ゆうじーより引用

■『青の時間』薄井ゆうじ


■題名: 青の時間
■著者: 薄井ゆうじ
■出版: ハルキ文庫


『青の時間』薄井ゆうじ

薄井ゆうじ━青の時間━

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開成への国語 薄井ゆうじ ━青の時間━ 3

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問 「彼が来ないかと誘ったのだった」とありますが、「万里夫」が「僕」を水車小屋に誘った目的を答えなさい。

e:これは”意味深”の誘い?

F:"水車小屋"

e:「水車」=「万里夫」?

F:それはさておき・・・「万里夫」は「水車小屋」で何をしたのか?

e:”マジック”じゃないですよね・・・そこんとこの

F:説明を

e:具体的に!

F:実行した内容ですね。

e:そして、その行動によって

F:どのようなことを伝えよう

e:「マリオット」いや「万里夫」の”メッセージ”?

F:を考えます。

e:確かに、「」

 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」

F:とあります。さらに「これは手品なんかじゃない」

 「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」

e:「水車」=「万里夫」は、こうして回すんだということをね。

F:「忘れないでほしい」・・・それはさておき・・・

e:ここで、”マジック”のようなことが起こっていますね。

F:「僕」から見れば

e:”マジ???”って感じですか!?

F:現実的に考えれば

e:誰が考えても

F:実現不可能と思われたことが・・・

e:目の前で”現実”になっていく・・・

F:つまり、現実に困難と考えられたことが

e:「万里夫」の手で

F:”実現”されていく状況が・・・

e:これぞまさしく”マジック”!?

F:そういうふうに「僕」は思ったことでしょう・・・

e:「水車」が動く、あるいは

F:”動かせる”ということは

e:果たして”何”を意味しているのか?

F:本当のところは・・・

e:「薄井ゆうじ」に訊いてみなければ

F:わからない・・・

 水車はまだ回りつづけている。僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた。きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ。

 彼は僕に、水車の回るのを見せるためにだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。

e:解釈はあくまでも、推測

F:憶測の域を出ない

e:っていうことですな。

F:どう考えようと「読み手」の自由

e:とにかく、いろいろと考えさせてくれる

F:ところが、”ウスイ”

e:”クジラ・ワールド”の

F:醍醐味

e:っていうことですか・・・

F:”選択肢”問題にすると

e:”ヤバ”くなる?/p>

F:正解が複数になる可能性が出てくる?

e:昔、選択肢に噛み付いた作家がいましたね・・・

F:それはさておき・・・

e:ところで、「万里夫」の願い事は?

F:「水車」を回すということは

e:その願い事を叶えるための

F:ひとつのステップかもしれませんね・・・

e:願い事とは?

F:将来、サーカスに出られるようになることですね。

e:そのためには?

F:早く一人前の”大人”になること

e:つまり、誰よりも早く”自立”するということですか?

F:そうならなければと

e:「万里夫」は考えたのかな?

F:誰にも頼らずに

e:”ひとり”で「水車」を回すこと

F:がその手段と考えたのでしょう。

e:そして、「万里夫」は「僕」に対して、こんなことを言っていますね・・・

F:「・・・、僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」

e:自分で考えろと・・・お前も早く自立しろ、と?

F:さらに、

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする。」

e:「流れを止める」とは?

F:”自分の意思”を持て

e:”他力本願”ではなく

F:”主体性”を身につけろ

e:”自我”の確立?

F:”自主性”

e:行き着くところが”唯我独尊”になってしまっては困るけど・・・

F:天上天下?

e:なんだかんだ、勝手な解釈を言ってきましたけど・・・

F:要するに、こういうことでしょうね。いつか、自分の意思で

e:”大人”になろうと

F:する時が必ずやって来るものだ

e:から、「獏」にも

F:来るだろうと・・・

e:また、後に

 僕は無言で、小屋のなかで踊りつづける人形や家具を見ていた。そのときふと、彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた。なぜそう思ったのかはわからない。たぶん、水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ。

F:とありますね。

e:「彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた」・・・

F:ここから、友達だと思っている「僕」に

e:「万里夫」が近々”別離”?

F:”別れ”が来ることを

e:”暗示”?

F:しているとも考えられますね。「水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ」

e:「逢うは別離のはじめ」?

F:愛別離苦?

e:さよならだけが人生だ!!!

 かれはそう言って、あとは黙ってしまった。長い時間、僕と万里夫は土手にすわって水位が上がっていくのを見ていた。川はもう土手の縁すれすれまで上昇して、かなり上流のほうまであふれそうになっている。

 「もういいんじゃないか」

 「まだだ」と彼は言った。

 「できるだけ多く貯めるんだ。そうすれば水車はもっと早く回る」

 彼は僕に、水車の回るのを見せるためにだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。僕は誰も通りかからなければいいがと思いながら、土手の縁ぎりぎりになって、あふてはじめている小川を見ていた。

 「もういいかな」

 彼はゆっくりと立ち上がった。板を一気に取り除くのは容易ではなかった。やがて板がはずれると水は奔流となって水車小屋のほうへ走った。ぎい、と鈍い軋み音を立てたあと、水車は一気に回りはじめた。上流まで水をたたえた小川はさらに水車を回転させようと、膨大な水を走らせている。彼はその様子を無表情で見ていた。やがて僕に、来いよ、と言った。うながされて小屋のなかに入ったとき、僕は息を呑んだ。

 回転する水車で、小屋は重く振動している。水車の軸は小屋のなかで回転しながら、そこにあるさまざまなものを動かしているのだった。軸から動力を得て、マリオネットのようにピエロの人形が踊っていた。大きなサイコロが回転し、ハンモックが揺れ、冷蔵庫や家具が踊っていた。それらはすべて、見えないワイヤーで水車につながっているのだった。

 「これは手品なんかじゃない」彼が言った。

 「でも僕は、こういうことがしたかったんだ」

 水車はまだ回りつづけている。僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた。きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ。

 「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」

 僕は無言で、小屋のなかで踊りつづける人形や家具を見ていた。そのときふと、彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた。なぜそう思ったのかはわからない。たぶん、水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ。

問 「もっと別のことが言いたかったにちがいない」とありますが、「別のこと」とは何ですか。

問 「きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ」とありますが、「彼」は「僕」にいったい何を伝えたいのですか。

十八年前、青木万里夫という色白の少年が中学に転校してきた。夏休み、妹の奈奈と森へカブト虫を捕りに行き、僕はそこで万里夫に遭遇する。その日から僕は万里夫が一人住んでいる水車小屋へ行くようになり、いろいろなマジックを見せられた。冬休みが終わると、万里夫はあげたカブト虫を返して、サーカス団員の両親を追って転校していった。それっきり僕の水車は止まっていた。
 三十二歳になった僕はフリーの「呼び屋」をやっていて、今抱えている仕事は、ブルーという世界的なマジシャンを日本に招聘してテレビCMに起用することだった。半年間接近を試みてあきらめかけていた頃、話を聞くというメールが届いた。妹に途中シカゴに寄るよう言われ空港で待っていると、妹の代わりに三島沙菜江という女性が迎えに来た。その女性がブルーのエージェンシーの担当者で、なぜか妹もその事務所で働いていた。暗い部屋で会ったブルーは、水車小屋や冬のカブト 虫の話を始めた。彼は青木万里夫なのだろうか。仕事のすべてを任せている小倉貴史に相談するように言われ、会ってみると小倉はブルーとは対照的に色黒で 快活な男だったが、サングラスをかけるとなぜかブルーに似ていた。日本に帰った僕は、ブルーのマジックのプロジェクトの中で働きはじめる。奈奈は小倉に、沙菜江はブルーに恋していた。 そして、脳外科医鴻池によって明かされるブルーの悲劇。
 特異な才能を持つ人の孤独、それにかかわって見守る人々、最後に訪れる別れと再生。いつもの薄井ゆうじパターン。
 「青の時間にはすべての生命が眠って活動を停止しているように見えるが、その生命体のなかでは細胞が、あるいは器官が生き生きと活動をつづけている。来たるべき目覚めのために用意された烈しい時間、それがタイム・ブルーだ」
 「僕はすべての場所へ行くことができる。すべての場所に僕の答は用意されている。僕は無数の僕のなかから、たったひとりの僕を選びとるために歩きだす。」

薄井ゆうじ━青の時間━

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開成への国語 薄井ゆうじ ━青の時間━ 4

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 やがて冬になった。町は深い雪に閉ざされて、学校は冬休みに入った。僕は家族とともに正月を過ごしながら、こんな寒いなか、万里夫はあの小屋で何をしているのだろうと考えた。だが僕にも僕なりの正月の行事があって、冬休みのあいだは一度も水車小屋へは行かなかった。そうして冬休みが終わった。

 寒い朝だった。僕と妹は深い雪のなかを学校へ向かっていた。今日から三学期がはじまる。妹は小さな手袋をはめて首にはマフラーを巻いている。二人の吐く息は真っ白だった。ゆうべ降り積もった雪はいまはやんで、朝の光にきらきらと輝いている。

 雪原の一本道を黙々と歩いていたときだった。誰かが遠くで呼んでいるような気がして僕は足を止めた。だが雪の原が広がっているだけで人影は見えなかった。気のせいだろうか、そう思って歩き出そうとしたとき、すぐ背後から呼び止められた。

 「岩崎ミツル」

 出席簿を読み上げるみたいな、抑揚のない声だった。その高音の混じった声に聞き覚えがあった。万里夫の声にちがいなかった。

 「青木・・・・・・?どこにいるんだ」

 周囲を見まわした。妹も声がしたほうを見ている。だがその声は方角の定まらない音声で、どこから聞こえてきたのかよくわからない。周囲は畑で、いまはその上を厚い雪が覆っている。ひとが隠れる場所はない。細い樹木が雪のなかから数本顔を出しているが、そんな細い木の陰では、とてもひとが隠れることはできない。そう思いながらその木を見ていたとき、まるで木の幹がスリットになったみたいに、そこから空間の裂け目を押し割るようにして万里夫が出てきた。

 まるで白い雪景色のカーテンを切り裂くみたいにして彼の体が現れたのだった。

 僕は息を呑んだ。

 「驚いた?」万里夫はうっすらと微笑んでいる。「夏からずっと、このトリックを考えていたんだ。どうにか完成したみたいだ」

 妹が木に駆け寄って、その裏側を調べている。何も見つけられなかったのか、すごすごと戻ってきた。

 「いったいどうやって・・・・・・」

 「仕掛けは教えられない。すごく複雑なんだ」

 彼は満足そうに言った。彼のこんなに豊かな表情を見るのは、はじめてだった。気がつくと彼は両手に大きなボストンバッグをさげている。学校の鞄は持っていない。

 「どうした。学校へは行かないのか?」

 「さよならだ」彼は静かに言った。「手紙が来たんだ」

 彼は遠い町の名を言った。その町にこれから旅立つのだと言う。たぶんそこは、もう菜の花が咲きはじめているだろう。それくらい遠い町だった。

 「ほかの荷物は別便で送った。学校へも昨日、手続きに行った。きみだけには、さよならを言いたかった」

 寒いせいだろうか、僕は胸が締めつけられるみたいな、息苦しい感じにとらわれた。本当に彼は旅立つんだ。そう思うと、かるい怒りのようなものがこみ上げてきた。もっと親しくしておけばよかった。

問 「かるい怒りのようなものがこみ上げてきた」のは、なぜですか。

e:「もっと親しくしておけばよかった」また、出ましたね。常套”文句”

F:こういう”シーン”の定番”セリフ”って感じですかね・・・

e:連続しますね。

F:例えば

 「それに、ぼく、もうすぐ転校するし」

 わたしはゆっくりと首を回して彼を見た。

 「どこに?」

 「東京」

 「そうか」

 わたしはなんとなく道の端にしゃがみ込んだ。目の前を川が流れている。水量は少なく、乾いた土手には手を切りそうな薄の葉が揺れている。そんなものを眺めながらしばらく黙っていた。ーあの日のあなたがここにいる  松村栄子  ━001にやさしいゆりかご━ラストシーンーより

e:この”シーン”での「わたし」の心情?

F:「そんなものを眺めながらしばらく黙っていた」

e:という、ここにすべてが言い尽くされているって感じかな・・・?

F:情景描写

e:心象風景

F:細部の”読み取り”は

e:かなり高度だけど・・・”至言”?

F:さて、

 寒いせいだろうか、僕は胸が締めつけられるみたいな、息苦しい感じにとらわれた。本当に彼は旅立つんだ。そう思うと、かるい怒りのようなものがこみ上げてきた。もっと親しくしておけばよかった。

e:「息苦しい感じ」?

F:「本当に彼は旅立つんだ」

e:「そう思うと」

F:「かるい怒りのようなもの」

e:とは?

F:「きみだけには、さよならを言いたかった」

e:この”怒り”って、「万里夫」に対しての?

F:それも無きにしもあらず?

e:「もっと親しくしておけばよかった」とありますから・・・

F:自分自身に対して、と考えるのが・・・

e:「万里夫」は「僕」を”特別視”してますな。

F:”特別な存在”ですね。

e:一方、「僕」はそれほどまでの

F:”親密感”は持っていないですね。

e:つまり、「きみだけには」という

F:特別な好意

e:とびっきりの?

F:好意を寄せる「万里夫」に対して

e:それほどまでに「万里夫」に熱意をあげていない

F:強い”思い”を抱いていない「僕」

e:相手の自分に対する”思い”に比べて

F:自分の”思い”はそれほどでもない、と

e:”思い”の弱さ?

F:を感じさせられていると思いますよ。

e:いままで、そういう風に付き合ってきたという

F:「万里夫」に対する”接し方”

e:への”後悔”ね・・・

F:それが、

e:「もっと親しくしておけばよかった」

F:という感慨につながっていくと・・・

e:まさしく、「わたし」

F:「しばらく黙っていた」

e:「水車」をながめながら・・・

F:「僕」は???

e: とにかく”別れ”と”後悔”は

F: ”つきもの”ということで……

"青の時間 (ハルキ文庫) by  薄井 ゆうじ http://t.co/f79NKR4 世界中に名前をとどろかせている、マジシャン・ブルー。その正体は謎につつまれていて、素顔さえ見たものはいない。ブルーを日本に招聘するという、およそ不可能と思われる仕事を引き受けた僕が手を尽くし果て、途方に暮れていた時、なぜか、彼..."

薄井ゆうじ━青の時間━

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開成への国語  僕の水車は止まってしまったのだった 薄井ゆうじ ━青の時間━ 完 エピローグ

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 それきり、僕の水車は止まってしまったのだった。ぼくはそれ以来、特に親しい友人をつくろうとしなかった。意識して誰かを避けようとしたわけではないが、ひとと歩調を合わせることが億劫になり、僕は本を読み、ひとりで過ごす時間が長くなった。いままで無意識に回っていた水車が、ぴたりと止まってしまったみたいな感覚だった。あの雪の日、僕の少年時代は終わったのだろう。

問 「僕の水車は止まってしまったのだった」とありますが、「水車」は「僕」にとって、いったい何だったのですか。

e:”僕”の「水車」は止まってしまった

F:”僕”の「少年時代」は終わった

e:「水車」=「少年時代」?

F:「水車」とは?

e:「少年時代」とは?

F:それぞれの

e:”共通項”を見つける?

F:「水車」は

e:”水”がなければ回らない

F:「少年時代」は

e:「流れていくことしか知らない」

F:「万里夫」は「水車」は必ず

e:いつか”止まる”

F:と予言していますね。

e:自力か

F:他力か

e:もちろん、自力で止めなければ・・・

 「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする。」

F:流れを作り「水車」を”自力”で回して

e:そして流れを”自力”で止めると

F:自然と「水車」は止まる。それが出来ない間は

e:「少年時代」

F:それが出来れば

e:「少年時代」を卒業?

F:大人になれず

e:子供っぽさを引きずっている間は

F:言葉を換えて言えば

e:”自立”できないうちはまだ

F:「少年時代」

e:「水車」が止まった時点で

F:「大人への道」を

e:”模索”する時が

F:始まった、と言えるんじゃないですか?

e:それに」比べると、何の疑問も持たずに日々を過ごしてきた

F:「水車」を回していた頃は

e:”空”回りしていた?

F:素直で、あどけない

e:大人になりきれない、

F:無邪気な「少年時代」が

e:「僕」にとっての「水車」だったというわけ?

F:流れは?

e:「青」

F:「水車」が回る

e:「時間」

F:「少年時代」

e:「青」の

F:「時間」

e:だったりして・・・?

「青の時間」は、「草も木も、動物も昆虫もすべてが眠ってしまうような深夜」を言う。青の時間は眠っているように見えて体内で細胞や器官が生き生きと活動をする「来るべき目覚めのために用意された烈しい時間」でもある

e:「水車」は

F:「青の時間」の”象徴”?

e:「少年時代」は

F:「青の時間」?

謎に包まれた世界的マジシャン・ブルー。哀しい真実が明らかになる時、彼は姿を消した。未来の可能性を描く、長篇ファンタジー

  担当編集者から一言 「文春エンターテインメント」シリーズ第二弾として登場するのは薄井ゆうじ氏です。SFでもミステリーでもない、ノン・ジャンルとでも言うべき独自のファンタジックな世界を描いてきた薄井氏は、昨年吉川英治文学新人賞を受賞して、その存在を大きくアピールしました。今回の『青の時間――Time Blue――』では、本名・年齢・国籍などすべてが謎に包まれた世界的マジシャン・プルーの悲しい真実が、彼の幼馴染みの主人公との交流を通して明らかになっていきます。生きていくとはどういうことかを問い、人格の多様性、未来の可能性を強く訴える力作です。

主人公の男性(岩崎満)は少年時代に手品の上手な不思議な少年青木万里夫に出会う。水車小屋、冬のカブトムシといった出来事だけを頭の片隅におきながら、岩崎は成長しフリーでプロモーターをしていた。

彼に、世界的なマジシャン・ブルーを日本に招聘するという仕事がやってくる。すべてが謎に包まれていたブルーへのコンタクトはなかなか成功しない。「ブルー」の好意からやっと連絡が取れ、ニューヨークへ向かう途中に妹の暮らすシカゴへと寄ると、妹がブルーの窓口となっていた会社で働いていることが判明。そして、窓口となる女性(沙菜江)や「ブルー」本人との出会いを果たす。そして、小倉という男にも出会う。彼はブルーのマジックの準備をすべて仕切る人間だった。

ブルーと小倉は正反対の性格をしていた。太陽の光やタバコの煙を嫌がり一つの部屋にこもってマジックを作りあげるブルー。浅黒い肌をしヘビースモーカー、そして常に誰かしらとコミュニケーションをしながらバリバリ仕事をこなし豪遊もする小倉。その2人の絶妙なコンビネーションが、世界的なマジシャンブルーを演出していた。

ブルーは日本へ向かうことを決める。日本での壮大なマジックが開催されることになった。

ブルーは、岩崎に会ったときに懐かしいね、と言う。「ブルー」と小倉は体格がほとんど同じで、小倉がサングラスをかけた顔は「ブルー」そっくりだった。「ブルー」と小倉が同一の場に姿を現すことはなく、彼らが会うときは常に2人だけだった。

「ブルー」は正体はいったい何者なのか。青木万里夫なのか。小倉なのか。

小倉に恋する岩崎の妹や、小倉を捨て「ブルー」を愛する沙菜江。そして青木万里夫を追いかける岩崎。それぞれの悩みや考えを抱えながら準備は進む。

ついに、10万人の観客全員を消すが、元に戻す方法は「ブルー」以外だれも知らないというマジックが決行される。

これを読んでもよくわからないだけだろうけれど、内容はこんなかんじ。

感想


初めて知ったのは10年以上も前、NHKFMの青春アドベンチャーというラジオドラマだった。幻想的な雰囲気をうまく演出したドラマだった。そこから原作であるこの本に手を出した。

今回たぶん4回目か5回目。

主題がなんなのか、わかるようでわからない。作品全体が醸し出す雰囲気が好きで時々読み返したいと思う本だ。


表題の「青の時間」は、「草も木も、動物も昆虫もすべてが眠ってしまうような深夜」を言う。青の時間は眠っているように見えて体内で細胞や器官が生き生きと活動をする「来るべき目覚めのために用意された烈しい時間」でもある。この作品では、その青の時間が、日本で執り行われるマジックのための壮大な準備期間であり、ブルー・小倉・青木万里夫という人間が次のステップへと進むための時間であることを示しながら進んでいく。


あらかじめ全ての答えを用意しておくことで、どういう答えを出してもほらここに正解があるよといって相手を驚かせるトリックが何度か登場し、人生も未来の可能性をあらかじめ色々考えておきその中から進む道を選ぶという似たような構造をとっているのではないか、といった比喩が用いられる。


そういうものか。と、何となく思いながらも、完全に納得できるようなものではない。

最終的に何かの解答にたどり着くかといえば、そうでもない。

なんとなく、雰囲気が好きだとしか言いようがないのだが、その雰囲気がぴったりと私の好みにはまったために何度も読みたいと思う本だ。ーObra de Sobra - algo interesante - 『青の時間』薄井ゆうじーより引用

プロフィール
筆名:薄井ゆうじ
本名:薄井雄二(ネット名:くじら鳥)
生年月日:昭和24年(1949年)1月1日
出身地:茨城県(県立土浦第一高等学校卒)
高校卒業後、日雇い生活。
その後、イラストレーター「たの・かえる」として週刊プレーボーイに五年、夕刊フジ紙に十六年間イラストを掲載。イラストルポやグラフ誌写真取材等を手掛け、広告及び編集プロダクション「株式会社イーハトーブ」を経営。現在は専業作家として文芸各誌に小説を多数連載。

NHK-FM 青春アドベンチャー 『青の時間』第1回~第5回(全10回) 原作:薄井ゆうじ 脚色:じんのひろあき <出演> 岩崎満=古澤徹、ブルー=橋本さとし、三島沙菜江=舵一星、岩崎奈奈=千紘あい、小倉貴史=近江...

NHK-FM 青春アドベンチャー
『青の時間』第1回~第5回(全10回)
原作:薄井ゆうじ
脚色:じんのひろあき
<出演>
岩崎満=古澤徹、ブルー=橋本さとし、三島沙菜江=舵一星、岩崎奈奈=千紘あい、小倉貴史=近江谷太朗、鴻池進=吉田鋼太郎、少年の満=舵一星、少女の奈奈=千紘あい、青木万里夫=あづみれいか
(1996年7月5日~7月26日放送)

薄井ゆうじ━青の時間━

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開成への国語  その厩舎は、潮風をまともに受けていた  竹西寛子  ━神馬━ 1 

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竹西寛子━神馬━

本

  その厩舎は、潮風をまともに受けていた。

  島の山すそに建っている、わずか一頭の馬のための小屋でしかなかったけれど、神社への参けい人は、この前を通らなければ、本殿に入ることも境内から出ることもできなかった。馬は、「神馬」であった。

 潮がひくと、島の砂浜にはいくつもの水たまりでは、にげおくれた小さな魚が厚い砂のかべに頭を打ちつけたが、明るい、すんだ水の中の魚は、時々目玉と骨だけになって直進するように見えた。

問 「潮がひくと~に見えた」までの描写は、この物語全体でどのような意味を持っていますか?

 連らく船は、日にいくども陸地とこの島の間を往き来する。

  陸の少女がはじめてこの神馬を見かけた日は、それは馬厩の中で、優しい大きな目をふせるようにして、海に向かったままじっとたたずんでいた。

 たてがみをふるでもなく、床をけるでもなく、まばたきもあまりに間遠だったので、少女は、この馬は本当に目が見えるのかしらと疑ったほどである。

  最初の時、少女は、自分たちのほかにだれもいない厩舎の前で、母親に、この馬は石けんをつけて洗えばもっと白くなるのではないかとたずねた。母親は、なるかもしれないがならないかもしれない。生まれつきということもあるし・・・と言った。
  少女は、練兵場で、茶色や黒の馬に混じってむち打たれながら砂ぼこりをあげている白い馬で、?、今見ているのよりはずっと白かったと思うのに、神社で飼われている馬がこれでは神様に対して申し訳ないような気持だった。しかし、生まれつきかもしれないと言われてみて、はじめて自分の言ったことにどきりとした。

問 「神様に対して申し訳ないような気持」にどうしてなったのですか。

問 「どきりとした」のはどうしてですか?

  茶色の馬は何と呼ぶの?

  少女はもじもじしながら、自分でも思いがけないことをたずねていた。

問 「思いがけないこと」とはどのようなことですか。

 栗毛でしょうね。

 母親はそう答えた。ただし、しっぽやたてがみの色がちがうと、呼び方もまた変わるものらしいとつけ加え、た。

 黒い馬は?

 青毛。

 それならこの馬は白毛?

 母親はしばらく考えていたが、

 白毛とは言わないでしょう。やっぱり白馬かしら・・・・・・

と言葉をにごした。


竹西寛子「蘭」竹西寛子『蘭』 : あしたちずーより引用

竹西寛子━神馬━

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開成への国語  竹西寛子  ━神馬━ 2

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竹西寛子━神馬━

本

 二度目の時、厩舎の前にはちょとした人だかりがしていた。少女が近寄って見ると、最初の時と同じように海に向かっておとなしくたたずんでいる神馬の前で、赤ら顔の中年の男が、和服のふところから大きな折り財布を取り出すところだった。

 素焼きの小皿にもられた神馬のえさは、麦と人参の二種類であった。男はどちらも買った。そして髪に花かざりをつけた幼女に人参の皿をあたえ、両手で後ろからだき上げると、石の台のくぼみにえさを移させた。馬は、そのくぼみを鼻先とくちびるでぬぐうようにしながら人参を口に移したが、食べ終わるか終わらないうちに、とつぜん大声に男がさけんだ。

 お廻り!

  あの優しい大きな目を、まぶたがゆっくりおおった。しばらくそうなっていた。再びまぶたが開くと、神馬は頸を上下にふってから、かれ草のしきつめられている床をふんで、左手に静かにまわりはじめた。少女は目をみはった。厩舎はあまり広くはなく、馬がその中を一巡するのにさほどの時間もかからなかったけれど、少女にはずいぶん長い道程に感じられた。

問 「少女にはずいぶん長い道程に感じられた」のはどうしてですか?

e:『乙吉のだるま』にしろ、この『神馬』にしろ、昔、関西の学校で出たんですよね。

F:大昔に、ヴィアトール洛星で出ました。

e:現、洛星中ですね。

F:塾の夏期講習のテキストに使いましたよ。

e:『忘れえぬ人々』もそうでしょ?

F:あと『先生の結婚』

e:武蔵で出た?

F:『心の小径』

e:金田一京助でしたっけ?

F:森鴎外やフレデリック・ブテエの作品もですね。

e:『記述』に改題して?

F:『選択肢問題』はそうですね。

e:『乙吉のだるま』も『神馬』も、その後、こっちの学校にも出たんでしょう?

F:女子校にも出てますよ。

問 「潮がひくと~に見えた」までの描写は、この物語全体でどのような意味を持っていますか?

問 「神様に対して申し訳ないような気持」にどうしてなったのですか。

問 「どきりとした」のはどうしてですか?

問 「思いがけないこと」とはどのようなことですか。

問 「少女にはずいぶん長い道程に感じられた」のはどうしてですか?

問 「風に吹き分けられたすすきの穂波のように」という表現は、どんな役割を果たしていますか。

問 「写真と実際との区別がつかないものになっていた」のはどうしてですか。

問 「父親の実感」とは、どのような気持ちですか。

問 「自分が非常に悲しい気分になっている」のはどうしてですか?

問 「あの目と同じようにわたしも優しければ」とありますが、どのように優しくすればよいのですか?

問 「はじめてただの見物人ではなくなっていたことに満足した」とありますが、どのようなことに満足したのですか。

問 「怖さ」とは、どのような怖さですか。

竹西寛子━神馬━

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竹西寛子━神馬━

本

  格子のすきまに白い顔がもどった時、中年の男は、今度は男の児をだき上げて麦を移させた。馬は形よく開いた耳をぴくぴくさせながら、頸を深くかたむけて石の台に顔を寄せてきた。額から鼻すじにかけての毛が、風に吹き分けられたすすきの穂波のように、きれいに左右に分けられている。少女は、この馬も、時には風を突いて広い草原をかけたいだろうにと思った。以前写真で見た、明け方の草原を勢いよくかけて行く一群の馬の遠い影のような姿は、少女にはいつのまにかもう、写真と実際との区別がつかないものになっていた。

問 「風に吹き分けられたすすきの穂波のように」という表現は、どんな役割を果たしていますか。

問 「写真と実際との区別がつかないものになっていた」のはどうしてですか。

 ようやく麦を食べ終わったころ、待ちかねたように男がまたさけんだ。神馬はいったん顔を起こすと、たてがみのもつれている頸をしっかり立てたまま、いくどか頸を左右にふった。それから目をふせた。しかし、男がいま一度、前よりも大きな声でさけぶと、もう頸はふらず、そのまま頸を落として、前と同じ方向にまわりはじめた。

  幼女が新しい人参をせがみ、男の児が次の麦を求めた。よし、よし。いくらでも買ってやるぞ。赤ら顔の男は、皿の数に生きがいを感じているらしかった。子供の声のはずみに、父親の実感をかみしめているらしかった。

問 「父親の実感」とは、どのような気持ちですか。

e:大昔、関西で出た問題が

F:5年後にこっちで出るなんて、言われた時期もありました。

e:最近はどうなんですか?

F:どうなんでしょう?

e:昔は関西の学校も本屋さんで買えたんですけどね。

F:今は『灘』『ラサール』くらいかな?

e:あとはネットで購入?すると、Mのあれは貴重な存在になった?

F:4年から買ってる方もいますよ。

e:じゃあ、3年分!?

F:そうですね。で、毎年、分析してますね。

e:四教科?

F:もちろん!

e:Yの『四科のまとめ』?

F:昔は良かった?

e:モノクロの時代の?

竹西寛子━神馬━

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竹西寛子━神馬━

本

  オマワリ!

  男の声に、子供たちの声が重なった。神馬はたてがみをふりながらまわっては食べ、食べてはまわった。少女は、白い馬を見ているはずであった。神馬を見ているはずであった。けれども目覚めたまま不思議な生きものの夢をみているようだというのが少女の実感であった。
  いつのまにか、少女は人だかりの外におし出されていた。そうされていながらなお蹄の音を聞き、人声を聞いた。神様のお乗りになる馬だから、人間お言葉がちゃんとわかるの。いまに目がまわってぶったおれるぞ。食べるだけじゃあ運動不足になるからな。もういやだという時は頭をふるのね、かしこいは。ちがうよ、どなられて、音におどろいてまわるんだよ・・・・・・・・・
  少女はそうしているうちに、どういうわけか、自分が非常に悲しい気分になっていることに気づいた。

問 「自分が非常に悲しい気分になっている」のはどうしてですか?

e:関西の学校も詳しい?

F:地元の有力塾の情報もデータベース化して分析してますね。

e:頼もしい゛親御さん゛!

F:第1志望校の『過去問』の『四教科』の分析は当然としても

e:『四科のまとめ』+『四科のぶんせき』

F:『御三家』『筑駒』

e:『灘』

F:『駒東』『栄光』レベルは

e:当たり前?

F:親御さんは゛縁の下の力持ち゛的存在に徹する

e:゛口゛より゛手゛が合格の秘訣ですか?

F:手作業の分量で『合否』は決する?!

e:口数の分量じゃない?

F:手作業と口数は反比例?

e:われわれとは真逆?

F:手作業と口数は比例?

e:教え子は?

F:よく書き、よくしゃべる!!

e:よくしゃべり、よく書き??その量に合否は比例する!?

竹西寛子━神馬━

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竹西寛子━神馬━

本

  三度目の時、神馬はまぶたを閉じたままかれ草の上に横たわっていた。神馬はまぶたを閉じたままかれ草の上に横たわっていた。前肢と後肢を行儀よくそろえて海の方に流している。時々身ぶるいしてうすきまぶたを開いたが、つづきの眠りに帰るようにじきに閉じた。大きな体が無防備になると、小さな体以上にあどけなく見えることがある。横たわっている馬は、参けい人の呼びかけにも、命令にも少しも反応を示さないので、厩舎の前の人だかりはすぐにくずれたが、一時するとまた新しい人が寄った。
  少女は、この馬は今日は病気かもしれないと思った。そう思って見ると、気のせいか息づかいがせわしそに見えた。しかしよくながめているうちに、病気ではなくて、ちょっと休んでいるのかもしれないと思うようになった。
 神馬にもお休みがあってもいい。そうでなければ目がまわってしまう。
  さらにまたその次に考えたのは、もしかするとあのように人にあらがっているのかもしれないということだった。ただそれにしては、この神馬の目が優し過ぎた。馬には、これまで一度も手をふれたことがないし、馬の後ろを通ってはいけないとお母さんにもよく注意されてきたけれど、あの目と同じようにわたしも優しければ、かれ草の上にひざまづいてほおをなでても、この馬は決して荒びはしないだろうと思った。

問 「あの目と同じようにわたしも優しければ」とありますが、どのように優しくすればよいのですか?

F:お子さんも同じだと思いますよ。

e:お子さんは口数も手数も多い方が勝ち?

F:相乗効果!?

e:とにかく口も手も

F:そして、頭も

e:より多く使った方が

F:確実に合格します。

e:よくしゃべり、よく書き

F:よく頭を働かせ。

e:ごく稀に例外のお子さんもいますけど。

F:とにかく、親御さんは

e:もっぱら黙って゛手゛を動かす!?

F:あと9カ月!

e:270日!

F:合格への近道

e:急がば廻れ!?

 新しい人だかりがくずれ、足音がばらばらと本殿の方へ遠ざかっていった。少女はこの時もいっしょの母親に、もう少しここに居て、と言った。母親はうなずいた。石の台には、人参がのせられたままになっている。

 不意に、前肢を引き寄せるようにして馬が起き上がった。尾でわき腹を打ち、前肢と後肢を片方ずつ交互に折り曲げたりしていたが、」威勢よく身ぶるいをすると、静かに石の台に近づいた。食欲をみせた。少女は人参を一皿求め、母親に背をつかまれたままのび上がるようにしてそれを石台に移した。

e:「陸の少女」って?

F:島に対して陸地に住む少女という意味合いでしょうか。陸地は広島?

e:「連らく船は、日にいくども陸地とこの島の間を往き来する。」とありますね。瀬戸内海の島?

F:「少女は、この馬は本当に目が見えるのかしらと疑ったほどである。」

e:動作が緩慢でおとなしく

F:少しも生き生きしたところがない

e:本当に目が見えるのかしら?なんてね。

F:神様に仕えるものは

e:スロー?で、スローフード?

竹西寛子━神馬━

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人の生きのびるかぎり続く気重さ  開成への国語  竹西寛子  ━神馬━ 完

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竹西寛子━神馬━

本

わたしのえさをたべている。その通りであった。少女は、はじめてただの見物人ではなくなっていたことに満足した。くぼみはすぐに空になった。すると神馬は、声もかけられないのに、予定の行動のようにあの見なれた左まわりをはじめたのである。少女は、まるで自分が、お廻り! とさけびでもしたような怖さにうろたえながら母親と顔を見合わせ、その足どりを追った。

問 「はじめてただの見物人ではなくなっていたことに満足した」とありますが、どのようなことに満足したのですか。

問 「怖さ」とは、どのような怖さですか。

その姿を見た少女は、神馬といっしょにいたこれまでのどの時よりも不幸せになっている自分に気づくのであった。

 人の生きのびるかぎり続く気重さであり、後ろめたさであろうと気づくのは、まだずっと後のことであった。

問 「気重さであり、後ろめたさ」とはどのようなものですか。

F:武蔵H14(2002年)に竹西寛子の「兵隊宿」、同年成蹊に「兵隊宿」の「蘭」が出てますね。

e:「兵隊宿」は川端康成文学賞受賞作品でしょう。最近では灘でも出ましたね。

F:「洋館の人達」(H19)でしょ。普段着の生活のひとこまを

e:何気なく文章にしてる、って感じですか?

F:しかし、被爆体験もあって

e:存在意義を問うている?

F:人間そのものの在り方といいますか

e:深遠さ?

F:悲哀?

e:この神馬も読み方しだいで

F:洛星の問題が好きな理由ですね。

e:ここに興味深い資料がありますよ。

《東京書籍版教科書ガイド国語総合(現代文編)》あすとろ出版

F:高等学校1年国語の

e:いわゆるアンチョコ版ですか?

F:『神馬』を読み解く!?

F:洛星の設問と同じのがありますね。

e:ところが、

F:解釈が違ってるんでしょ?

e:どっちが正しい?

F:というより、読みがどちらが゛深い゛がということでしょうか?

e:゛神馬゛のとらえかたの違い?

F:でしょうね。

e:これも、本当のことは

F:竹西寛子にきいてみなければ

e:わからない?

「少女は、まるで自分が、お回り とさけびでもしたような恐さにうろたえながら母親と顔を見合わせ、その足どりを追った。」

F:最後の、この一文の゛恐さ゛をどう読むか、でしょうか?

e:もちろん、本文全体ででしょ?

F:問題文の範囲で、ですね。

e:何か、ヒントは?

F:ヒントになるかどうか...少女は神馬と何度出会ってますか?

e:3度?

F:2度目の終わりにと比べると

e:3度目になると、

F:少女は神馬をずっと身近に感じていることがわかりますね。

e:「神馬にもお休みがあっていい」なんて、ね。

竹西 寛子たけにしひろこ小説家1929年広島県に生まれる藝術院会員『管弦祭』で女流文学賞掲載作は「海」昭和五十五年(1980)三月号に初出翌年に川端康成文学賞を受ける。

まず、私は作者について、非常に端正な言葉を使う人だなと思った。悲劇的な文章でも派手な文章でもなく、ただ普遍的な、一人の少女の成長を的確に描いた文章に好感を持つことが出来た。
 少女が初めて神馬を見た日、二度目に見た時、そして三度目の時。この三回においての感情の変化、自分についての理解がよくあらわされている。人間の命令に無抵抗に従う馬の弱さ、そしてそんな人間の醜さ、その二つの存在に気が付き、また自分自身にもそんな二面性があることを知る。神馬に対しての心通じたという思いも全て自分の思い込みであった、そう気付いた少女の不幸せさ、また後に気付くであろう人生の不条理さは決して話の中だけのことではないなと思った。
 私もこうして自分自身を知っていくのかな、と思わされた。また、前に述べたように作者の日本語の使い方に感動し、他の作品も読みたいと思った。美しいという言葉がよく合う作品だった。ー14歳の軌跡ー竹西寛子『神馬』を読んで-より

「神馬(じんめ)」
 「神馬」は、かつて大きな神社などに飼われていた白馬のこと。神を乗せる神聖な馬として奉納さえたが、しだいに見世物にされたようである。戦前の読者なら、白馬が天皇の乗馬であったことを想起するだろう。主人公の少女は、神社で神馬を見る。人がえさをやるとき、馬に芸をさせるのを見て悲しくなる。見物人がいないとき、少女ははじめてえさをやる。だが馬は少女が要求もしないのに芸をする。少女はたまらない「不仕合せ」と「後ろめたさ」を感じる。相手にたいする同情が空転し、その思い上がりが痛みとなって自身の身へと振りかかってくることを的確にとらえた作品。

「兵隊宿」
 ひさし少年の家は兵隊宿にされることが多い。彼は絵が好きで、馬の絵をよく描く。戦地に赴く将校らが彼を連れて神社に(最後の)お参りをすることを頼む。ある日、行を共にした彼は、将校らの、死を前にしながらそれをおもてに出さない切実な気持ちを理解したと思う。少年の眼から戦中の日本の姿がくっきりととらえられている。

竹西寛子━神馬━

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開成への国語  わかったね?  岩瀬成子  ━そのぬくもりはきえない━ 1  

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岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

本

犬の散歩をひきうけて出入りするようになった家で出会った不思議な男の子。なんだかちぐはぐなのに、どうしようもなく響きあう心と心。子どもたちの現在を描き続けてきた児童文学作家による待望の長編。ー内容(「BOOKデータベースより」)

 お母さんは「えー」と言ったあと、小さい息をはきだしながら、「どう考えても、飼えないわね、犬は。むりよ」と言った。「よおく考えてごらん。うちは、昼間はだれもいないの。犬はずっとひとりぼっちよ。そんなこと、させていいの?それに、そんな年をとった犬は、もうよその家にはなじめないのよ。犬だって、かわいそうよ。わかるでしょ、そういうことは」

 お母さんはお茶碗をあらっていた。手ぎわよく。くるくると泡だったスポンジがお皿の上でまわる。お母さん、指輪をはずすのをわすれてる、と波は気がついた。小さな乳白色の石がはめこまれた指輪をしたまま、お母さんはお茶碗をあらっていた。お母さん、スポンジみたいだと思う。

 なにもかもすいとってしまう。言いたいことも考えてることなんかも。あのね、お母さん。波はお母さんを見る。明るい色に染めた髪、白い首、こめかみ。いろんな気持ちがごちゃごちゃする。何をどう言えば、お母さんは「へえ、そうだったの」とうなずくんだろう。それがわからない。どんどんふくらむスポンジのお母さんのそばにいると、自分が氷のように溶けて消えてしまうような気がする。ときどき、そんな気持ちになる。ああ言っても、こう言っても、まちがってるって言われそうな気がする。波はそう言うけど、それはほんとの気持ちじゃないよと、お母さんは言う。よおく考えてごらん。波がしたいのは、ほんとはこうでしょ。お母さんはいつも波のほんとの気持ちを説明しようとする。波にかわって、わかってるよ、波の気持ち。よおく、わかってる。そのうえで、言ってるのよ。お母さんはいつだって、波の心のなかをぜんぶ知っているみたいに言う。

 いい?だから、まちがっちゃだめ。お母さんの言うとおりにしておけば、心配ない。ちゃんとうまくいくから。ね、お母さんだってお仕事したり、おうちのことをしたり、がんばってるよ。だから波もがんばろう。お母さんはいつだって、波にいちばんいいことを考えているんだから。そこをまちがえないで。まちがえないで、波。

 この手もまちがい、足首もまちがい、背中の骨もまちがい、おなかも、胸もまちがい。波は、自分のなにもかもが、いけない気がする。

「わかったね?」

 お母さんは波を見た。

「ハルはね、行くところがないんだよ」

 波は目を下にむけて言った。

問 「小さな息をはきだしながら」とありますが、この時の「母親」の気持ちを答えなさい。

問 「お母さん、スポンジみたいだと思う」とありますが、波は母親のどのようなところを「スポンジみたいだ」と感じていますか。

問 「お母さんはいつだって、波の心のなかをぜんぶ知っているみたいに言う」とありますが、母親がいかにも「波の心のなかをぜんぶ知っている」かのように話しているところを答えなさい。

問 「お母さんはお茶碗をあらっていた。」から『わかったね?』」までの「波」の気持ちや様子を答えなさい。

問 「ハルはね、行くところがないんだよ」とありますが、この時の「波」の気持ちを答えなさい。

e:岩瀬成子(いわせ じょうこ)と言えば

周囲の人々との関係に揺れて自分を探る子どもの姿を描くのを得意としている。ー岩瀬成子 - Wikipediaーより引用

F:すでに2編取り上げました。

アメリカから来た日系人のミスター・カラキがりんの家に滞在している  岩瀬成子 「迷い鳥とぶ」

捨てられた猫がいろんな人に出会っていく  岩瀬成子 「鹿」

e:1950年生まれ

F:団塊の世代の最後の方の

e:児童作家

F:今江祥智を知ったのが

e:児童作家になるきっかけ

F:だったんですね。

e:『そのぬくもりはきえない』は

F:日本児童文学者協会賞を受賞してます。

e:「不思議なぬくもりを放って印象的な小説

F:『たまご』を書いた作家ですね。

e:特色は?

F:少しの無駄も、型どおりの台詞も、ない

e:もっともらしい説教もない

F:わかりやすい励ましもない

e:

2009年1月17日(土)の「朝日新聞」夕刊に

F:雑誌『日本児童文学』1-2月号の創作特集号に関する記事が掲載されました。

e:リード文に「わからなさ」に寄り添う、秋葉原事件を受け

F:児童誌が創作特集、少女の心の変化を丁寧に、とあります。<ー児文協のブログ: ニュースーより引用>

e:因みに「たまご」はどんな内容かな?

「たまご」の主人公は、クラスになじめずに無口になった高校生の女の子。傾聴ボランティアとしてつきあう76歳の老女との静かな日々の中で、あるとき、老女の思いがけないふるまいに心が反応する。殻に閉じこもったそれまでの気分と、誰かと話をしたくなった新しい気分。閉じた世界にひびを入れたのは、女の子へのもっともらしい説教やわかりやすい励ましではなく、よく知らない他人の何げない行動だ。ー- 児童文学と音楽の散歩道 - Yahoo!ブログーより引用

F:女の子の視点で、日常に起きた化学反応が丁寧に描かれています。記事の中で

「普段の生活の中で、意識していなくても、だれかがだれかに作用を及ぼすことってある気がするんです。何かを見て、おなかの底がこそばゆくなって“心がくすくすする”時に、だれかに話しかけたくなる気持ち…。そういう変化を書きたかった」

「私には、子どものころに社会や世間に抱いた“はっきりかみくだけたという感じのなさ”や“ちぐはぐ感”がしつこく残っている。子どもや若者を取り巻く社会の環境はかわったけれど、子どもは変わっていない。彼らを外からのイメージで類型化せず、当時の自分の“わからなさ”を描けば、それは今の子どもにも伝わるのではないかと、そう信じて書いています」

e:“はっきりかみくだけたという感じのなさ”

F:“ちぐはぐ感”

e:分かりそうでよく分からない?

F:分からなそうでよく分かる?

e:そういう感じ?

F:”わからなさ”に寄り添う

e:って言うのはグッドです!?

岩瀬 成子(いわせ じょうこ、1950年昭和25年)8月25日 - )は、日本の児童文学作家。山口県玖珂郡玖珂町出身。山口県岩国市在住。ー岩瀬成子 - Wikipediaーより引用

岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

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開成への国語  岩瀬成子  ━そのぬくもりはきえない━ 2

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岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

本

問 「小さな息をはきだしながら」とありますが、この時の「母親」の気持ちを答えなさい。

問 「お母さん、スポンジみたいだと思う」とありますが、波は母親のどのようなところを「スポンジみたいだ」と感じていますか。

問 「お母さんはいつだって、波の心のなかをぜんぶ知っているみたいに言う」とありますが、母親がいかにも「波の心のなかをぜんぶ知っている」かのように話しているところを答えなさい。

問 「お母さんはお茶碗をあらっていた。」から『わかったね?』」までの「波」の気持ちや様子を答えなさい。

e:「小さな息」?

F:「犬を飼いたい」という「波」の申し出に

e:「えー」

F:という否定的な反応を見せた「母親」は

e:「困ったことを言い出したものだわ」

F:とため息

e:「小さな息」

F:をはきながら

e:「波」の説得を始めますね。で、「母親」の気持ちは?

F:厄介な話が舞い込んできて

e:困惑?

F:困っている。

e:で、次の「スポンジ」?

F:「母親」は「波」が何を言っても

e:「それはほんとの気持ちじゃないよ」

F:「波がしたいのは、ほんとうはこうでしょ」

e:と否定し、

F:自分の考えを植えつけようとします。

e:そんな「母親」のことを

F:「波」は「なにもかもすいとってしまう」

e:「スポンジ」?

F:のように感じています。

e:つまり、「波」の考えを誘導し

F:みんな消してしまうところです。

e:いざ、書かせると、いろいろな答えが出てきそう・・・

F:案の定、

・ 「波」を傷つけずにそれとなく間違いをただすところ。

・ 「波」の悩みや苦しみを全て解決してくれるところ。

・ 「波」の心の汚れをすべて洗い流してくれるところ。

e:直後の文をしっかり読めば

F:”しっかり”読まなくても・・・

e:有り得ない答え?因みに、直後の文は

F:「なにもかもすいとってしまう。言いたいことも、考えていることなんかも」

e:「スポンジ」のイメージを勝手に膨らませている?

F:後の文を最後まで読ますに”思い込み”で書いている?

e:これまた、『選択肢』問題だとすんなりと

F:正解を出しちゃうかも、です。

e:後の設問を先に解いてから、

F:解くというのも一つのやり方です。

e:”逆も真なり”

F:?

e:さて、「母親がいかにも「波の心のなかをぜんぶ知っている」かのように話しているところ」は?

F:「わかってるよ、波の気持ち。よおく、わかってる」と「波」の気持ちを認めた後に

e:「波」のほんとの気持ち」を説明することで

F:「波」の考えと自分の考えを

e:すりかえてしまう?

F:「母親」の”話術”

e:言葉の”魔術”?

F:犬を飼うことについて「母親」は

e:「いまは波は犬のことをとってもかわいそうに思って、そんなふうに考えているってことはわかるの。

F:動物をかわいそうに思う気持ちはだいじよ。

e:とっても。」

F:と、まるで「波」の心を/p>

e:知っているかのように

F:言います。そうして”譲歩”

e:相手の意見に従う

F:した上で、「だいじだからこそ、犬にとっていちばんい選択をしてあげなくちゃ」

e:と話を進め、結局は「よその人にもらわれたほうが、きっとその犬にとってはしあわせだと思う」

F:と犬を飼うことをあきらめさせよう

e:としている?「お母さんはお茶碗をあらっていた。」から

F:『わかったね?』」まで

e:の「波」の気持ちや様子は?

F:「波」は「母親」と話していると次第に、何を言っても

e:「まちがってるって言われそうな」

F:”不思議な”感覚にとらわれていきます。

e:「お母さんはいつだって、波にいちばんいいことを考えているんだから。

F:そこをまちがえないで。

e:まちがえないで、波」

F:という「母親」の言葉は「波」の頭の中で/p>

e:”呪文”?

F:のように繰り返されます。

e:サブリミナル(効果)?

F:そして「この手もまちがい、足首もまちがい、背中の骨もまちがい、おなかも、胸もまちがい。

e:波は、自分のなにもかもが、いけない気がする」

F:ようになった「波」は本当の自分がわからなくなり

e:何かあやふやなもの

F:になってしまったかのような錯覚に陥ります。

e:つまり、「母親」が理想の「波」のイメージを押し付けてくることで、

F:自分という”存在”があやふやになってしまった

e:かのような感じにとらわれている?

山口県立岩国商業高等学校卒業後、公務員として働く。1972年に岩国市にできた喫茶店「ほびっと」で今江祥智を知り、京都の聖母女学院短期大学の聴講生として児童文学を学ぶ。1975年、岩国に帰郷後、在住。ー岩瀬成子 - Wikipediaーより引用

主人公の波(なみ)は小学4年生の女の子。ひょんなことからご近所のお年寄りの犬を散歩させることになるが、その家の二階には幽霊が出るという噂。好奇心から二階に上がった波はそこで不思議な少年、朝夫くんに出会う。すっかり仲良くなったふたりだが、朝夫くんの存在は波以外誰も知らない。果たして朝夫くんは幽霊なのか?

おとなは「あなたのためだから」といって子供のまえに見えないレールを敷いてしまう。波のお母さんもそのひとりだ。好きでもないソフトボールも進学塾も、「将来のあなたのため」と言われると、そうなのかなと思う。思っていることをスポンジのように吸い込んでしまうお母さんに対して、波は言いたいことを言えない辛さを抱えている。のどに重たい石がひっかかっているような感じだろうか。「がんばりなさい」「がんばろうね」その言葉は子供にだって重すぎることがある。

朝夫くんと知り合って、楽しく過ごすうちに少しずつ変わっていき、自信が芽吹いていく波。小学生の少女の心の葛藤を描いたすがすがしい作品。朝夫くんの意外な正体も読んでいて楽しい。

岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

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岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

本

 「だれか、ほかの、犬好きの人のところへ行くのが、その犬にとってもしあわせだと思うよ。いまは波は犬のことをとってもかわいそうに思って、そんなふうに考えているってことはわかるの。動物をかわいそうに思う気持ちはだいじよ。とっても。だいじだからこそ、犬にとっていちばんい選択をしてあげなくちゃ。ね、ほかにも方法があるし、よその人にもらわれたほうが、きっとその犬にとってはしあわせだと思う。それに、そんないい犬なら、きっともらい手はたくさんあるわよ」

 「だめ」

 波は自分の前髪をつんつんひぱった。もうハルがこの家のなかを歩きまわっているような気がする。しゃかしゃかと爪の音ををたてながら、しっぽでわらいをふりまきながら、玄関から、いまこちらに歩いてくる。

 お母さんはお茶碗をあらい終え、もうこの話はおしまい、というように、タオルで手をふき、流しの前をはなれた。

 「飼えば。その犬」

 居間のソファからお兄さんが、いきなり言った。

 「おとなしくて、かしこくて、なんでもわかる犬なんてさあ、めったにいないよ」

 お兄さんはソファごしにお母さんを見て言った。

 お母さんはエプロンをはずしながら頭をふり、

 「うちはだめよ。わたしが仕事をやめて家にいるのならべつだけど、そんなことをしたら、だれがわたしたちをやしなってくれるの?できない相談よ。うちでは犬は飼えない。いくら考えてもむり」

 と、もういちど、はっきり言った。

 「わからないですね、ぼくは」

 お兄さんはお母さんを見ている。ちらちらと見て、それからテレビのほうを見て、それからまたちらちら見る。

 「ミミのこと、話してなかったっけ」

 お母さんは冷蔵庫にもたれて言った。

 ミミという名の猫を子どものときに飼っていた、とお母さんは言った。全身黒で、目は金色。かつおぶしとおかきがすきで、窓から日なが一日外をながめていた。学校から帰ると、足音をききつけて、どこにいても玄関までむかえに出てくる猫だった。冬は庭にくる冬鳥をねらい、夏は木かげをさがして涼んでいた。ミミと呼ぶと、一拍おいて声のほうにゆっくり顔をむけた。

 お母さんはぽつりぽつりとミミの話をした。お母さんが猫を?波はおどろいた。

問 「自分の前髪をつんつんひぱった」時の、「波」の気持ちを答えなさい。

e:「だめ」と言うのが精一杯で

F:それ以上の言葉が出てこないことに

e:苛立ち?

F:前髪をひっぱる「波」

e:このあたりから怒りのエネルギーがたまり始め

F:この後に、出てきますが

e:「ハルは行くところがないんだよ」

F:大声で怒りを

e:爆発させた。

F:自分の気持ちをうまくつたえることができずに

e:いら立っている?

1978年『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で産経児童出版文化賞小学館文学賞IBBYオナーリスト賞を受賞、『ステゴザウルス』『迷い鳥とぶ』で路傍の石文学賞を受賞。2008年、『そのぬくもりはきえない』で日本児童文学者協会賞を受賞。

周囲の人々との関係に揺れて自分を探る子どもの姿を描くのを得意としている。ー岩瀬成子 - Wikipediaーより引用

実は岩瀬成子の作品はほとんど初めてなので、
他作品と比べられないのが残念なのですが、
すごい好みだったので、他のもこれから読みます。

主人公の波ちゃんは4年生だが、
中学生位の子が読むのに良いのではなかろうか。

おかあさんが恐い・・・
おかあさんが「正しくて、エライ人」な所がより一層恐い。
でもまあ仕事を持っている「おかあさん」は
こうは出来ないと思うけど。(したくても忙しくて)

「何かを聞かれて黙ってしまう子」が
なんで黙っているのか、を
こんなにわかりやすく
教えてくれる作家は他にいないと思うのだ。

岩瀬成子━そのぬくもりはきえない━

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