問 「彼が来ないかと誘ったのだった」とありますが、「万里夫」が「僕」を水車小屋に誘った目的を答えなさい。
e:これは”意味深”の誘い?
F:"水車小屋"
e:「水車」=「万里夫」?
F:それはさておき・・・「万里夫」は「水車小屋」で何をしたのか?
e:”マジック”じゃないですよね・・・そこんとこの
F:説明を
e:具体的に!
F:実行した内容ですね。
e:そして、その行動によって
F:どのようなことを伝えよう
e:「マリオット」いや「万里夫」の”メッセージ”?
F:を考えます。
e:確かに、「」
「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」
F:とあります。さらに「これは手品なんかじゃない」
「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」
e:「水車」=「万里夫」は、こうして回すんだということをね。
F:「忘れないでほしい」・・・それはさておき・・・
e:ここで、”マジック”のようなことが起こっていますね。
F:「僕」から見れば
e:”マジ???”って感じですか!?
F:現実的に考えれば
e:誰が考えても
F:実現不可能と思われたことが・・・
e:目の前で”現実”になっていく・・・
F:つまり、現実に困難と考えられたことが
e:「万里夫」の手で
F:”実現”されていく状況が・・・
e:これぞまさしく”マジック”!?
F:そういうふうに「僕」は思ったことでしょう・・・
e:「水車」が動く、あるいは
F:”動かせる”ということは
e:果たして”何”を意味しているのか?
F:本当のところは・・・
e:「薄井ゆうじ」に訊いてみなければ
F:わからない・・・
水車はまだ回りつづけている。僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた。きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ。
彼は僕に、水車の回るのを見せるためにだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。
e:解釈はあくまでも、推測
F:憶測の域を出ない
e:っていうことですな。
F:どう考えようと「読み手」の自由
e:とにかく、いろいろと考えさせてくれる
F:ところが、”ウスイ”
e:”クジラ・ワールド”の
F:醍醐味
e:っていうことですか・・・
F:”選択肢”問題にすると
e:”ヤバ”くなる?/p>
F:正解が複数になる可能性が出てくる?
e:昔、選択肢に噛み付いた作家がいましたね・・・
F:それはさておき・・・
e:ところで、「万里夫」の願い事は?
F:「水車」を回すということは
e:その願い事を叶えるための
F:ひとつのステップかもしれませんね・・・
e:願い事とは?
F:将来、サーカスに出られるようになることですね。
e:そのためには?
F:早く一人前の”大人”になること
e:つまり、誰よりも早く”自立”するということですか?
F:そうならなければと
e:「万里夫」は考えたのかな?
F:誰にも頼らずに
e:”ひとり”で「水車」を回すこと
F:がその手段と考えたのでしょう。
e:そして、「万里夫」は「僕」に対して、こんなことを言っていますね・・・
F:「・・・、僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」
e:自分で考えろと・・・お前も早く自立しろ、と?
F:さらに、
「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする。」
e:「流れを止める」とは?
F:”自分の意思”を持て
e:”他力本願”ではなく
F:”主体性”を身につけろ
e:”自我”の確立?
F:”自主性”
e:行き着くところが”唯我独尊”になってしまっては困るけど・・・
F:天上天下?
e:なんだかんだ、勝手な解釈を言ってきましたけど・・・
F:要するに、こういうことでしょうね。いつか、自分の意思で
e:”大人”になろうと
F:する時が必ずやって来るものだ
e:から、「獏」にも
F:来るだろうと・・・
e:また、後に
僕は無言で、小屋のなかで踊りつづける人形や家具を見ていた。そのときふと、彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた。なぜそう思ったのかはわからない。たぶん、水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ。
F:とありますね。
e:「彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた」・・・
F:ここから、友達だと思っている「僕」に
e:「万里夫」が近々”別離”?
F:”別れ”が来ることを
e:”暗示”?
F:しているとも考えられますね。「水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ」
e:「逢うは別離のはじめ」?
F:愛別離苦?
e:さよならだけが人生だ!!!
かれはそう言って、あとは黙ってしまった。長い時間、僕と万里夫は土手にすわって水位が上がっていくのを見ていた。川はもう土手の縁すれすれまで上昇して、かなり上流のほうまであふれそうになっている。
「もういいんじゃないか」
「まだだ」と彼は言った。
「できるだけ多く貯めるんだ。そうすれば水車はもっと早く回る」
彼は僕に、水車の回るのを見せるためにだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。僕は誰も通りかからなければいいがと思いながら、土手の縁ぎりぎりになって、あふてはじめている小川を見ていた。
「もういいかな」
彼はゆっくりと立ち上がった。板を一気に取り除くのは容易ではなかった。やがて板がはずれると水は奔流となって水車小屋のほうへ走った。ぎい、と鈍い軋み音を立てたあと、水車は一気に回りはじめた。上流まで水をたたえた小川はさらに水車を回転させようと、膨大な水を走らせている。彼はその様子を無表情で見ていた。やがて僕に、来いよ、と言った。うながされて小屋のなかに入ったとき、僕は息を呑んだ。
回転する水車で、小屋は重く振動している。水車の軸は小屋のなかで回転しながら、そこにあるさまざまなものを動かしているのだった。軸から動力を得て、マリオネットのようにピエロの人形が踊っていた。大きなサイコロが回転し、ハンモックが揺れ、冷蔵庫や家具が踊っていた。それらはすべて、見えないワイヤーで水車につながっているのだった。
「これは手品なんかじゃない」彼が言った。
「でも僕は、こういうことがしたかったんだ」
水車はまだ回りつづけている。僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた。きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ。
「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」
僕は無言で、小屋のなかで踊りつづける人形や家具を見ていた。そのときふと、彼が遠くへ行ってしまうのではないかという思いにとらわれた。なぜそう思ったのかはわからない。たぶん、水車はいつまでも回りつづけるわけにはいかないのだ。
問 「もっと別のことが言いたかったにちがいない」とありますが、「別のこと」とは何ですか。
問 「きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ」とありますが、「彼」は「僕」にいったい何を伝えたいのですか。
十八年前、青木万里夫という色白の少年が中学に転校してきた。夏休み、妹の奈奈と森へカブト虫を捕りに行き、僕はそこで万里夫に遭遇する。その日から僕は万里夫が一人住んでいる水車小屋へ行くようになり、いろいろなマジックを見せられた。冬休みが終わると、万里夫はあげたカブト虫を返して、サーカス団員の両親を追って転校していった。それっきり僕の水車は止まっていた。
三十二歳になった僕はフリーの「呼び屋」をやっていて、今抱えている仕事は、ブルーという世界的なマジシャンを日本に招聘してテレビCMに起用することだった。半年間接近を試みてあきらめかけていた頃、話を聞くというメールが届いた。妹に途中シカゴに寄るよう言われ空港で待っていると、妹の代わりに三島沙菜江という女性が迎えに来た。その女性がブルーのエージェンシーの担当者で、なぜか妹もその事務所で働いていた。暗い部屋で会ったブルーは、水車小屋や冬のカブト
虫の話を始めた。彼は青木万里夫なのだろうか。仕事のすべてを任せている小倉貴史に相談するように言われ、会ってみると小倉はブルーとは対照的に色黒で
快活な男だったが、サングラスをかけるとなぜかブルーに似ていた。日本に帰った僕は、ブルーのマジックのプロジェクトの中で働きはじめる。奈奈は小倉に、沙菜江はブルーに恋していた。
そして、脳外科医鴻池によって明かされるブルーの悲劇。
特異な才能を持つ人の孤独、それにかかわって見守る人々、最後に訪れる別れと再生。いつもの薄井ゆうじパターン。
「青の時間にはすべての生命が眠って活動を停止しているように見えるが、その生命体のなかでは細胞が、あるいは器官が生き生きと活動をつづけている。来たるべき目覚めのために用意された烈しい時間、それがタイム・ブルーだ」
「僕はすべての場所へ行くことができる。すべての場所に僕の答は用意されている。僕は無数の僕のなかから、たったひとりの僕を選びとるために歩きだす。」
薄井ゆうじ━青の時間━expert FORUM (エキスパート フォーラム)
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